今回はウイルスが増える仕組みを簡単に…
他人の3Dプリンタにタダ乗り!ウイルスの増殖の仕組み
宿主に感染した後、ウイルスは自分のコピーを作り出します。ここからは、ウイルスが宿主の細胞に入り込んだ後に、ウイルスがどのようにして増えていくのかを見ていきましょう。
ウイルスは宿主の細胞に入り込むと、すぐ増殖の準備に取り掛かります。ウイルスは自分のコピーを作るための設計図(ゲノム)は持っているものの、コピーをするための機能(タンパク質を合成するための機構や代謝機構)は持っていません。
あ、この機能は例えるなら3Dプリンタといったところでしょうか。そこでウイルスは、侵入した動植物の細胞内にある3Dプリンタと材料(核酸やタンパク質等の物質)を勝手に拝借して、自分のコピーを増やすのです。
ウイルス以外の生き物は、細胞分裂といって1つの細胞が2つに、その2つの細胞がそれぞれ2つに(=合計4つ)…というように、分裂をして倍々に増えていきます。
しかし、ウイルスの場合はそうではなく、「部品組み立て方式」でコピーを増やします。ちまちま増える細胞分裂と比べて、これはとても効率的な増え方です。
あ、弁当屋さんでランチの時間帯に備えて、お弁当を同時に100個作る様子を見たことはありませんか?
イメージ的にはあんな感じです。
この部品組み立て方式は効率的なので、1つのウイルスが一気に数百万とか数億などになります。
インフルエンザウイルスの増殖を例に挙げると、1匹のウイルスが細胞に感染すると8時間後には100匹に、16時間後には一万匹に、24時間後にはなんと百万匹(!?)にまで増える計算になります。
ウイルスは食べ物の中でも増えるのか?
ウイルスは動植物の「生きている細胞内」でのみ増殖可能なため、食品などの中では増えることができません。
食中毒には細菌性のものとウイルス性のものがありますが、O157などの細菌性の食中毒は、食べ物の中でも菌が増えるので食べ物の管理が肝となります。
一方、毎年日本でも100万人が罹患するノロウイルスは、食品内では増えず人の腸内でのみ増殖をします。そして増えるだけ増えたら、便や嘔吐物などの形で体の外に出てきて、次の新しいターゲットに感染し広がっていきます。
…まるで人間がやってる焼畑農業みたいですね。
ウイルスが宿主から消える[暗黒期]とは?
ウイルスが、宿主(感染先の生き物)の細胞内で増殖活動をする際、一時的に細胞内からいなくなったかのようになる時期があります。それを「暗黒期(エクリプス)」と言います。
実際には、細胞内ではこの間にもウイルスをコピーする作業が粛々と行われているのですが、「部品」としては存在しても、「個体」としては存在しないため、ウイルスとしては検出することができず、さも細胞内からいなくなったようになるのです。
この暗黒期のことを聞いた時、何だか人に見えないところで地味にガリ勉をしていた浪人時代の己と重なってしまった自分です。暗黒期って語感も嫌いじゃない自分です。
で、暗黒期が終わって新しいウイルス(個体)が作り出されると、ウイルスは細胞膜を破って一気に外に飛び出します。
ええ、ええ、浪人時代に重ね合わせると「サクラサク」という感じでしょうか。
今回のおすすめのウイルス本
我がこれまでに読んだ中から、選りすぐりの生物・ウイルス関連本などをご紹介します。今回はこちらです。
生命―この宇宙なるもの
フランシス クリック
フランシス・クリック氏は、今世紀最高の分子生物学者とされる学者さんです。
遺伝子DNAの二重螺旋構造を解明して、ノーベル生理学・医学賞を受賞した殿方なのですが(ドロドロした裏話もある受賞)、なんとそんな偉い人がですね、
地球の生命はどっかの超頭のいい宇宙人が遥か昔、ロケットに種子を詰め込んで発射させ、地球に着して繁殖したのだと言っているんです、この本の中で。
これを「意図的パンスペルミア説」と言います。
あ、彗星が生命を運んできたというのが「彗星パンスペルミア説」ですね。
生命の源、DNAの構造解析をしたクリックさんがそう言うのならもうそうなんでしょう。
ええ、ええ、「なんでそうなるの!?」と不思議で堪らない方はこの御本をぜひ。
以上です。