前回は「水平感染」と「垂直感染」について説明しました。今回は侵入後にどうやって感染するのかを体内に入って迫っていきます。
どの時点で「感染」なのか問題
あ、最初にですが、ここではウイルスの行動の順序を明確化するため、
①宿主の体内に入り込む →侵入(感染ではなく)
②宿主の体内の細胞に侵入→感染
③細胞内で増える →増殖
という風にしたいと思います。
ウイルスによって感染できる宿主&増殖できる細胞が違う
ウイルスはありとあらゆる動植物に感染しますが、鳥だけに感染したり、人だけに感染したりというように、ウイルスによって感染できる宿主が決まっています。水平感染にせよ垂直感染にせよ、宿主の体に侵入したウイルスは、その後それぞれ宿主の体内の”決まったタイプの細胞”にのみ感染して増殖をします。
この感染できる・できないには「レセプター」と呼ばれるものが関係しています。レセプターは日本語では「感染受容体」と言われるもので、ある特定のウイルスに対して、レセプターを持っていたら感染するし、持っていないと感染しません。
超々単純化すると、ウイルスが鍵でレセプターは鍵穴。
鍵と鍵穴が合わないとウイルスは感染&増殖できないのですよ。
我々の体がウイルスの感染を君はOK、君はNGと選んでいるようなのです!
で、例えば、ヒトインフルエンザウイルスは人間にだけ侵入し、主に呼吸器(気管支・肺等)に感染して増殖します。これは人間の呼吸器の細胞が、ヒトインフルエンザウイルスのレセプターを持っているからです。インフルエンザの時に喉がいがらっぽくなり、声が出なくなったりするのはそのせいです。
同じように人間に感染するウイルスの例を挙げると、ノロウイルス・ロタウイルスは消化管の細胞、狂犬病ウイルス・ウエストナイルウイルス・日本脳炎ウイルスは神経系(脳)の細胞、肝炎ウイルスは肝臓の細胞でのみ増殖をします。また、HIVは免疫細胞で増殖をします。免疫細胞は全身にあるので、HIVは体中、つまり、全身どこでも増えることになります。ええ、ええ、恐怖を煽りたくはないのですが、本当に恐ろしいですね。
ちなみに、話題の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、東大のサイトによると「主に気道および腸管の上皮細胞(粘膜細胞)であり、特に鼻粘膜上皮細胞」で増殖するようです。
人によっても違う感染しやすさ
また、感染しやすい人、感染しにくい人というのが存在します。周囲がインフルエンザでバタバタ倒れている中、絶対インフルエンザにかからない人っていませんか? これは免疫力の問題が大いにありそうですが、ウイルスによってはレセプターが関係しているケースもあります。
こちらに関して、よく知られているのはノロウイルスの例です。ノロウイルスの場合には、血液型に関係する物質がレセプターの役割を果たしています。なんとO型の人の感染率は高く、B型の人の感染率は低いことがわかっています。私はA型のため、そこそこのようですが、牡蠣が大好きでちょっと悪くなっている風の牡蠣も食べまくっているのに、いまだにノロになったことがないので、もしかしたらノロウイルスくんと合致しないレセプターを持っているのかもしれませんね。
ちなみに、私はきのこが大好物なのですが、雪国まいたけさんのプレスリリースによると、まいたけには腸管免疫機能の活性化の作用があり、ノロウイルスやインフルエンザ、ヘルペス感染症に対してたいそう有効なのだそうです。インフルエンザには度々かかるため、予防のためにまいたけを大量に食べたくなりますが、食べ過ぎには注意しましょう。
今回のおすすめの生物・ウイルス本
我がこれまでに読んだ中から、選りすぐりの生物・ウイルス関連本などをご紹介します。今回はこちらです。
利己的な遺伝子
リチャード・ドーキンス
人生を変えた本というのは誰しも一冊持っていると思うのですが、まさにこの「利己的な遺伝子」は我を覚醒させてくれた御本です。
我々、生き物は遺伝子の単なる乗り物・運び屋という事実、子孫を残せなきゃ思想を残したらいいぜということに気が付かせてくれた「ミーム遺伝子」※という概念、この御本のおかげさまで人生がどれだけ軽く楽しくになったことか。
いや、逆に悩む人も出てきそうですが…
※ミーム:人類の文化を進化させる遺伝子以外の遺伝情報、つまり思想とか物語とか伝承されるものですね。孔子は死んでも論語は死なず。
本書の難点は厚さです。人にバンバン勧めているものの、結構な極厚なんですよね。しかも文字ぎっしり~。この40周年エディションは4cmくらいあります。さらにはかなりの重さ。故に、寝転びながら持ち上げて読んだりすると筋トレにもなる優れものです。
ぜひ!絶対読んでほしい!!!!!
えッ?値段が高い? 3000円ぽっちで人生変わるんなら安いもんですよ!!
ちなみに、この間「早く子どもが欲しい~かわいいし~」という大学の後輩(未婚・殿方)と話してて、先輩は子どもいらないのですかという流れになり、
「我、別に自身のDNA残そうとかそういう気ないから」
と言ってひかれてしまったのですが、「利己的な遺伝子」を読んでくれていたら、ひかれることもなかったはずだ(あ、この後輩には面倒なので推薦はしませんでしたが)。
子どもというのは自身(と片割れ)のDNAの塊、コピーなのです。
我は、核酸(DNAのことです。詳しくは後日)を拡散しようとは思わない故、ミームの増殖に没頭する。
以上です。