ウイルスはどこから来るのか?
地球上に物凄い数で存在しているウイルスですが、そもそもこれらは、一体どこからやって来たのでしょうか。ここで登場するのが、「彗星パンスペルミア説」です。
彗星パンスペルミア説とは、宇宙じゅうに生命の種が満ちあふれていて、それらが彗星によって地球に運ばれてきたとする説です。
この説によると、地球上には平均で毎日約100kgもの彗星起源の微生物(ウイルス・細菌)が宇宙塵(「うちゅうじん」と読みます)に交じって降り注いでいると推定されています。
地球には大気圏があるので、宇宙に対してバリアを張って閉じているような感覚を持ってしまいますが、実は開かれている開放系なのですよね。
「おいおい、それホンマかいな?」という方のために、インフルエンザウイルスの事例から、ウイルスが宇宙からやって来ている説についてご説明したいと思います。
インフルエンザの流行が表す宇宙飛来説
日本では特に冬、インフルエンザの集団感染による学級閉鎖や院内感染などがニュースになります。皆さんはインフルエンザにかかったことはありますか?
ええ、ええ、苦しいですよね。そのインフルエンザをもたらすインフルエンザウイルスが、実は宇宙からやってきていると唱えたのが、イギリスの天才学者で小説家でもあるサー・フレッド・ホイル博士&チャンドラ・ウィクラマシンゲ博士です。
インフルエンザは、桜前線のようにあるエリアから徐々に広がっていくのではなく、地球上の離れた複数地点で同時多発的に流行したりします。
病気が人から人へ病気がうつることを「水平感染」(ヒトヒト感染)と言い、インフルエンザの感染の拡大も、水平感染が主な原因と思われているのですが、同時多発的な感染者の発生は、感染経路が水平感染のみだったのであれば、説明のつかない現象です。
サー・フレッド・ホイル博士は、インフルエンザウイルスが宇宙から地球に降ってきて、人々に直接感染した後(天降感染とでも言いましょうか)、水平感染で広がるのではないかという仮説を立てました。
もちろん、それを裏付ける疫学的な実証データもあります。そのデータからわかったことを簡単にまとめておきますと、
[インフルエンザの天降感染の証]
・世界各地の非常に離れた場所で同じ日に出現することがある。
・比較的近距離であるのに、蔓延までに数週間かかることがある。
・インフルエンザウイルスを運んでいると考えられる対流の動きと、北半球・南半球・赤道下のエリアでのインフルエンザの流行(感染者数)の季節性が合致していた。(図①)
・世界的なインフルエンザの大流行と、太陽の黒点活動の活発化のピークの時期とが一致していた。(図②)※太陽の黒点活動が活発になると、成層圏の物質(ウイルス含む)が地上に落下しやすくなる。
図①
「彗星パンスペルミア」、チャンドラ・ウィクラマシンゲ著 恒星社厚生閣p.97
図②
「彗星パンスペルミア」、チャンドラ・ウィクラマシンゲ著 恒星社厚生閣p.99
いかがでしょうか。ちなみに、1918年に世界中で大流行し、感染者約5億人以上、死者数5,000万人から1億人とも言われているスペイン風邪は、インフルエンザウイルスが原因とされていますが、このことを発見したのは、日本の細菌学者の山内保博士でした。
えッ! 山内姓で細菌学者!? って、もしや…ナマケモノも大ファンの山内一也先生!?
と思ったのですが、先生と山内保博士はまったくつながりのない間柄だそうです(ご本人に確認済み)。
今回のおすすめのウイルス本
我がこれまでに読んだ中から、選りすぐりの生物・ウイルス関連本などをご紹介します。今回はこちらです。
宇宙を旅する生命 フレッド・ホイルと歩んだ40年
(チャンドラ・ウィックラマシンゲ, 松井 孝典他)
チャンドラさんとフレッド・ホイル博士との数十年間の軌跡が。なんというか今後の人生を歩んでいくための勉強になりました。
一橋大学の米ちゃんもなぜか推薦!
で、とフレッド・ホイル博士とチャンドラさんは師弟関係になあるのですが、偉大な師というのは人生を大きく左右しますね。師に恵まれるというのは大変ありがたいことですね。
そして自身で求めて、努力しているとそのような師はちゃんと見つかるものですね。
「会社の上司最悪、碌な人がいないな世の中!」
とか思っている方に読んでもらいたいです(もうウイルスとか関係なくなってきてる…)。
以上です。