最近よく聞く「スパイク」って?
前回までに、ウイルスの形や大きさについて説明しましたが、形もサイズも様々なら、体の構造もいろんなタイプがあるため、ウイルスの体の構造を一言で説明するのはかなり難しい…
のですが、ウイルスの体の構造をごくごく簡単に表現するとしたら、ウイルスは、
遺伝情報&それを保護するための殻や膜でできている物体
そんな感じのSomethingです。
生物が持っている全遺伝情報を「ゲノム」※と言うのですが、ウイルスはこのゲノムを最も身軽に、かつ、安全に運べるような構造をしています。
※ゲノムについては、覚えていたらずっと後で詳しく説明します。
ウイルスの体の構造まとめ
①遺伝情報が書かれた物質(ゲノム=DNAかRNA)が、タンパク質の殻に包まれている。
②ものによっては、それをさらに脂質の膜が覆っている。
③宿主細胞にくっつくための突起を体表に付けている。
①から順に説明していきましょう。
①カプシド
タンパク質でできた殻です。全遺伝情報物質であるDNAやRNAを包み込んでいます。
②エンベロープ
脂質でできた膜です。ウイルスの最も外側を覆っているコートみたいなものです。
③スパイク
タンパク質でできた突起物。宿主細胞に吸着・侵入したり、宿主の免疫機構から逃れたりするためにあります。スパイクタンパク質とも呼ばれます。
④テグメント
ヘルペスウイルスに特徴的なウイル ス構造、エンベロープとカプシドとの間に介在するタンパク質層のこと。
カプシドだけを持つウイルスもいれば、カプシドとエンベロープの両方を持っているウイルスもいます。宿主細胞に棲み着いたウイルスの中には、カプシドすら持たないものもいます。
我的にはオーバーコートのようなイメージのエンベロープは、ウイルスが宿主の細胞内で増殖を終え、細胞をぶち破って中から出てくる時に、”宿主細胞の膜”を勝手に拝借し、まとってきたものと考えられています。ええ、ええ、ウイルスくん、ちゃっかりしていますね(ちゃっかりという表現は適切なのか…)。
また、スパイクについて、インフルエンザウイルスを例に挙げてみますと、インフルエンザウイルスくんの表面には、400~500個ものスパイクが付いています。HA(赤血球凝集素)とNAという物質の組み合わせです。
ちなみに、HAはヘマグルチニン、NAはノイラミニダーゼと呼ばれるものです。私はなんとなく「ヘマグルチニン」という響きが好きです(だから何だよ)。
インフルエンザは、このHAとNAの部分の組み合わせが多様に変異するため、今年のインフルウイルスくんは、来年も同じインフルエンザウイルスくんではないということが起こります。
別人のようなインフルエンザウイルスくんに我らの体内の防御部隊(免疫細胞)がすぐ反応できないから、何度も何度もインフルエンザになったりする人がいるんですね~※
※同じものであれば、こいつまた来たなと即攻撃態勢に入れる。
そんでもって、インフルエンザ予防で石鹸による手洗いが推奨されている理由は、インフルエンザウイルスが、脂質の膜であるエンベロープに包まれているからです。
ええ、ええ、石鹸がエンベロープを壊すことができる=ウイルスくんが破壊されるので、石鹸での手洗いが有効なのです。
こうして仕組みがわかると手をちゃんとキレイに洗いたくなりますね。
それにしても、遺伝子をタンパク質(肉・筋肉)が覆い、それをまた脂質(脂肪)が覆っているって、人間の体の構造そのものですよね。
私には、「街を歩いている人々」が「巨大ウイルスくんたち」に見えます。
タイトルにもありますが、我々は巨大化し複雑化したウイルスなのではないかと思います。
実際そうでしょう。
今回のおすすめのウイルス本
我がこれまでに読んだ中から、選りすぐりの生物・ウイルス関連本などをご紹介します。今回はこちらです。
生物はウイルスが進化させた
(武村 政春)
ズバリ!ウイルス進化について語っています。
読書感想文送ったんだけど、無視されてますね(悲しいね)。
以上です。