03.ウイルスの定義。そもそもウイルスってなんだろう|YouもMeもほぼほぼウイルス

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今回は、ウイルスっていろいろ揺れてる存在なんです。というお話をします。

 

ずっと揺れに揺れている!?ウイルスの定義

02.ウイルスの名前の由来は?」でご説明しました通り、「毒」という不名誉な名前を付けられているウイルスですが、ウイルスはただの毒ではありません。

それでは、ただの毒ではないウイルスって、一体本当は何なのか…

これを定義するのは、実はかなり難しいことです。ウイルスが発見されてから100年以上経ちますが(歴史の詳細はまた今度)、実はウイルスって専門家の間でも定義が揺れている状態だったりします。

どうして定義ができないのかと言うと、「ウイルスとはこういうものだ!」と定義をすると、そこから外れた新種のウイルスが発見されてしまい、定義が崩される…ということが繰り返し起きているからです。

例えば、「サイズ」ですらも明確に定義できない状況です。

少し前まで、ウイルスのサイズはだいたい20~40nm(ナノメートル)※とされていました。ところがどっこい、2003年にミミウイルスという「巨大」ウイルスが発見されたと発表があり、ウイルスのサイズの前提が覆されてしまいました。発見されたミミウイルスのサイズは、750~800nm。ええ、ええ、一般的なウイルスの20~40倍も大きいサイズだったのです。

※1nm(ナノメートル):1mm の1,000,000 分の1。

 

ミミウイルスの構造
フサフサな毛に囲まれたミミウイルス

 

ウイルスはサイズが小さいため、電子顕微鏡という特別な顕微鏡でないと見ることができないとされてきたのですが、ミミウイルスは理科の実験で使うようなその辺の光学顕微鏡でも、普通に見ることができるくらいの「巨大さ」です。

このミミウイルスの発見により、「デカいウイルスも普通にいるじゃん~」ということになってしまいました。ちなみにこのミミウイルスはサイズのみならず、別の点でもウイルスの定義を崩壊させてしまっておるのですが、そちらについては後日…

そんなこんなで、「ウイルスは電子顕微鏡でしか見えない」などと、注記なしで説明している書物などには注意が必要です。それは真っ赤な嘘ですので。なんて言っていたら、なんと世界的に権威のある「オックスフォード英語大辞典」でのウイルスの説明が、やや切ないことになっていました…

 

ウイルス

一般的に核酸分子とタンパク質の外被からなる感染体で、微小なため光学顕微鏡では見えず、宿主の生細胞内でのみ増殖できる。

「Oxford English Dictionary」(オックスフォード大学出版局)

 

…しつこいようですが、ミミウイルスをはじめとした一部の巨大ウイルスは光学顕微鏡でも普通に見ることができます。さらに、タンパク質の外被(殻みたいな物)を持たないウイルスも存在しておりまして、最初の「一般的に」で予防線を張っているものの、泣く子も黙るオックスフォード辞典ですら、ウイルスが何であるか正確に言えていない状況です。ええ、ええ、こうなると何を信じたらいいのかわからなくなりますね。

ちなみに補足しますと、「宿主」というのは、ウイルスが感染する動植物のことです。

あなたがインフルエンザにかかった時、あなたはインフルエンザウイルスにとっての宿主です。また、たとえインフルエンザにかかっていなくても、生きとし生けるものは全て、何らかのウイルスに感染しており、体内体外にはウイルスがうじゃうじゃ存在しているため、あなたも私も、常に何らかのウイルスの宿主であります。

で、オックスフォード大学のウイルスの説明がかなり微妙な中、私が枕にしている「ウイルス図鑑101」(創元社)の定義はかなり秀逸だったため、ちょっとそちらの説明をご紹介させていただこうと思います。

 

ウイルスの定義

ウイルスとは、細胞とは異なる感染体であり、核酸分子(DNAまたはRNA)の形をした遺伝物質で成り立ち、たいていはタンパク質の外被に覆われ、侵入した宿主細胞内の機構を勝手に使って自己を複製し、拡散するものである。

「ウイルス図鑑101」(創元社)

 

ええ、ええ、専門用語がちょこちょこ用いられているため難解な印象を受けるかもしれませんが、しかし、こちらはこれ以上ないくらい簡潔な説明です。

ウイルスはとどのつまりは、「核酸が拡散するための存在」ってことなのです。

…ええ、ええ、つまらないダジャレはさておき、もっと言うと、核酸とは遺伝情報のことなので、ウイルスは、

「遺伝情報が拡散するための存在」ってことなります。

遺伝情報を運んでいる小さな小さな物体、ウイルス。これを理解しているとウイルスによって起こっている色々なことについての見方が変わってきますね。

 

今回のおすすめのウイルス本

我がこれまでに読んだ中から、選りすぐりのウイルス関連本などをご紹介します。今回はこちらです。

美しい電子顕微鏡写真と構造図で見るウイルス図鑑101 

色々なウイルスの写真がカラーで載ってます(鮮やかに色付けしもたの)。

カラー写真のエリア前のウイルスの解説と歴史の話が、とっても素敵にまとまっていて勉強になります。

「気持ち悪くないんですかウイルスの写真集なんて」

全然。いろんな形・種類があって「ほぉ~」となります。

バクテリオファージとか凄いですよ。

 

 

以上です。

 

 

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