本|「CRISPR (クリスパー) 究極の遺伝子編集技術の発見」これは現代人の課題図書

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CRISPR (クリスパー) 究極の遺伝子編集技術の発見の感想をお届けします。

 

遺伝子編集に興味ありませんか? えッ? 全然ない? 

ええ、ええ、ないとか言わせませんよ。既に世界中でいろんなことが起こってしまっているのです。

今回ご紹介するのは、超画期的なゲノム編集技術を発明した博士による一冊です。

 

CRISPR (クリスパー) 究極の遺伝子編集技術の発見

(ジェニファー・ダウドナ)

CRISPR (クリスパー) 究極の遺伝子編集技術の発見

 

「CRISPR」とは、Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats の略です。

何の略か書かれても、ますますわかんねーわという方のためにちょっと説明をば…

この技術を使うと、遺伝子(ゲノム)をちょいちょいっといじることができ、生き物に対してどんなことでもできます。

いや、できる可能性を秘めていて、今はできないことでも将来できるようになると考えられています。

あ、というか、、遺伝子なのかゲノムなのかはっきりしろ? ってゆうか、

「ゲノムと遺伝子とDNAと染色体の違いってなんですか?」

という方は、中外製薬さんのサイトにわかりやすい説明が載っていました。

図を拝借するとこんな感じです。

出典:中外製薬 ゲノムとは?https://www.chugai-pharm.co.jp/ptn/bio/genome/genomep09.html

 

話を元に戻しましょう。

我々という生き物は、遺伝情報を担っているDNAを構成している4つの物資(塩基と言います)の「A,C,G,T」という4文字を使って、32億文字で記述することができます。その文字を編集して、体現されるものを変えることができるのが、CRISPR技術です。

本書は、CRISPR技術の生みの親とも言える、ダウドナ教授による、CRISPRの技術的な説明、歴史・背景、現在起こっていることの解説、そして将来への問題提起の本です。

この技術は元々、遺伝子が原因で起こる病気の治療に用いるために開発されたのですが、デザイナーベビー作成というあらぬ方向へ向かってしまいそうな、そんな不穏な空気が業界に流れております。

CRISPR技術を使えば、モデルのような子供が欲しい人のために、脚長スタイル美人に赤子の遺伝子を編集とか、オリンピック用に筋骨隆々人間を作るとか…もしかしたら不死にするとかも。

これでいいんかという…多分よくない予感はしますよね。

ちなみに、私は第2部がとっても面白かったです。なぜなら、第1部は技術的な説明がメインっぽかったので、結構ツライ感じ…ええ、ええ、相当我慢して読み進めました(さすがの忍耐強さですね)。

 

「そっか、私文系だしぃ~無理」

とか言わずに広く読んでほしい本です。

ちょっと背伸びして読むと、いつかいいことがありそうな予感です。

 

 

商品の説明

内容紹介

「君の技術を説明してほしい」
ヒトラーは私にこうたずねた。その顔は豚である。
恐怖にかられて目が覚める━━。
ヒトゲノムを構成する32億文字のなかから、たった一文字の誤りを探し出し、修正するという離れ業ができる、その技術CRISPR-Cas9(クリスパー・キャス9)。2012年にその画期的遺伝子編集技術を「サイエンス」誌に発表したジェニファー・ダウドナ博士は、またたく間に自分の開発した技術が、遺伝病の治療のみならず、マンモスを含む絶滅動物の復活プロジェクト、農作物の改良など燎原の火のように使われていく様におののく。
豚の内蔵を「ヒト化」し、臓器移植するための実験も行なわれた。
人間は自らの種の遺伝子までも「編集」し、進化を操るところまで行ってしまうのか?
ノーベル賞確実と言われる画期的技術を開発した科学者の唯一の手記を独占出版。
 
プロローグ まったく新しい遺伝子編集技術の誕生
細菌がウイルスに感染しないために持っている免疫システムを、遺伝子の編集に利用できる。私たちが、その技術CRISPR(クリスパー)-(-)Cas9(キャス9)を発表したのが二〇一ニ年。以来、遺伝子を数時間で編集できるこの技術が、人類史上稀にみない変化をひき起こしている。
第一部 開発
第1章 クリスパー前史
遺伝性疾患は、DNA上の配列の異常によって起こる。では、それを編集修正することができれば病気は治療できるのではないか? ある遺伝病患者の奇跡的回復はそのことを示唆していた。クリスパーが開発されるまでの、人類の遺伝子編集研究の歴史を辿る。
第2章 細菌のDNAに現れる不思議な「回文」
動物のウイルス感染の防御としてのRNA干渉を研究していた私のもとに、見知らぬ研究者からの不思議な電話がかかる。「クリスパー」。彼女は言った。それは細菌の中のDNA塩基配列に見られる不思議な「回文」のことを指していた。
第3章 免疫システムを遺伝子編集に応用する
CRISPRのI型は、DNA塩基を高速で破壊する。ブレークスルーはII型の方にあった。II型のクリスパー特有の酵素Cas9 を研究するフランスの研究者から共同研究の申し出があった。それが、特定の場所で遺伝子を自在に編集できるツールの発見の鍵になる。
第4章 高校生も遺伝子を編集できる
私たちが二〇一ニ年に論文を発表してから、堰を切ったようにCRISPRの多用な利用法が発見されている。私を含む科学者は、医療ベンチャー企業をたちあげた。これまでの六〇〇分の一以下のコストで、短時間でできるこの「魔法の杖」を誰もが使い始めた。
第二部 応用
第5章 アジア象の遺伝子をマンモスの遺伝子に変える
CRISPR を利用した様々な試みが,世界中の研究室であるいは企業で始まっている。ウドンコ病の遺伝子を除去したパンコムギの作成。角の映えない牛。ハードード大はマンモスを現代に蘇らせるプロジェクトも始めた。が、倫理的境界をどこにひくべきか?
第6章 病気の治療に使う
CRISPR は7000以上ある単一性遺伝子疾患の治療に福音となる。先天性白内障、筋ジストロフィーなどではすでにマウスでの治療は成功済みだ。TALENを使った遺伝子編集では末期の小児ガンを治療した例もある。その最前線を報告する。
第7章 核兵器の轍は踏まない
豚の顔を持つヒトラーは私にこう語りかけた。「君の開発した素晴らしい技術の利用法を知りたい」。CRISPRは核兵器の轍を踏むのか? そうさせないためにも、社会を巻き込んだ議論が必要だ。私たちは「サイエンス」誌によびかけの一文を掲載する、

第8章 福音か疫災か?
私たちの「よびかけ」論文の直後に、中国の科学者による人胚にCRISPRを使った論文が発表された。米国の諜報機関はCRISPRを「第六の大量破壊兵器」と指摘する報告書を書く。人間が人間の遺伝子を改変することはどこまで許されるのか?

エピローグ 科学者よ、研究室を出て話をしよう
細菌の免疫システムというまったく関係のなさそうな研究からこの画期的な新技術が生まれたように、科学においては、基礎研究ほど大事なことはない。そして科学が行なっていることを一般の人たちと共有することが、より一層重要な時代になっている

 

今、現実にこういうことが進められている…というのを専門の科学者だけでなく、広く知っていた方がいい予感です。

1mmでも興味あればぜひ。茶の湯をゲノムの話しながらってオシャンティーではないですか。

 

以上です。

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